男女二人が暮らしている家。その庭には藤や薔薇、百合などの花々や、今は芽も生えず土の中にいる球根、 奇妙な置物やプラスチックのアヒルなどがいて、アゲハ蝶や蜂、インコやスズメなども集う、賑やかな庭です。しかし、その家と庭は独身寮に建て替えるために男女は立ち退かなければならなくなりました。庭の住人たちを愛し、彼らの行く先を探そうと必死になる女と、冷ややかな対応の男。果たして庭の住人たちは皆、無事に移り住むことができるのでしょうか。
ブラックユーモアを効かせたシュールな会話で紡がれるファンタジーが魅力のRising Tiptoeらしく、今回も毒舌混じりの会話が続くのですが、いつもよりも温かみを感じます。庭の住人たちが愛に満ちていて、人間への愛、仲間たちへの愛、運命への前向きな受け入れ、それらが愛おしく、観ていて優しい気持ちになれます。それゆえ、ブラックユーモアに満ちたジョークがおかしく、いつも以上に観客が笑いに包まれていたように思います。チャーミングな作品でした。
宇吹萌(うすいめい)さんの唯一無二の戯曲の世界、ぜひ多くの人に味わっていただきたいです。当日券もあるそうです。ぜひ!