俳優水野哲さんが率いるウォーラス一座の第10回記念本公演「新宿銀次─仇桜─」を観ました。

 

舞台は好景気に湧く昭和40年代末の新宿。

古いものは新しいものにとって変わられようとしていた。

古い街は再開発、義理人情は合理主義。

そんな時代の激動の間、10年の服役で知らぬままにいた男。

黒須銀次。人呼んで新宿銀次。

義理人情に厚い任侠の道を信じてきた銀次だったが、

出所後の新宿の街は、あまりにも様変わりしていた。

果たして銀次は、新しい時代のなかで、

生きていくことができるのか。

それとも──。

 

https://www.quartet-online.net/ticket/walrus-itiza

 

水野さんは1970年代に大活躍していた名子役です。

日本民放ドラマで今も最高視聴率の大ヒットホームドラマ「ありがとう」や

伝説の名作大河ドラマ「風と雲と虹と」では、加藤剛演じる主人公の子供時代など、

数々の人気作品に出演していました。

その後、ロックミュージシャンに転向し、

40代になってから再び演劇の世界に戻ってきました。

彼が率いるウォーラス一座は、社会派からメルヘン、時代劇など、

毎回ジャンルの異なる演目に挑戦し続ける異色の劇団で、

今回も初挑戦の任侠ものです。

しかし、任侠ものといっても、暴力ものというより、

愛、恋愛、貫き通す純愛などが描かれ、

また、理想と現実のせめぎ合いが描かれる、

ピュアな作品といってもいいでしょう。

 

私が手がけている演劇誌「小劇場」の3号は、

水野さんとウォーラス一座を特集しています。

 

https://shougekijou.thebase.in

 

そのため、稽古場にも何度も足を運びましたが、

拝見するたびに演者たちの演技に磨きがかかっていました。

本番では、実に完成度が高い舞台を魅せてくれました。

演技だけでなく、切り絵や写真を用いた舞台美術、

ウッドベースとスライドギターによる生演奏など、

見応えのある演出が効果を発揮しています。

 

残念ながら、このたびの台風19号の影響で、

土曜日の昼夜公演、日曜日の昼公演がなくなってしまいました。

公演は月曜日まで行なわれます。

見応えのある舞台です。

お時間がある方は、ぜひご覧ください。